医療機器メーカーは最初から医療機器を作っていたのか?│医療機器メーカー経験者の行政書士が解説

QMS省令. ISO 13485, 薬機法, 医療機器 コラム

医療機器メーカーと聞くと、最初から医療分野を専門に事業を行ってきた企業を想像される方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、現在医療機器を製造している企業の中には、もともと医療とは無縁の分野で事業を行っていた中小企業が数多く存在します。
本コラムでは、医療機器メーカーへと転換・参入した中小企業の事例を通じて、「医療機器メーカーの出発点」について考えてみたいと思います。


切削加工業から医療機器分野へ

朝日インテック株式会社

朝日インテック

医療機器分野への転換事例としてよく知られているのが朝日インテック株式会社です。同社は現在、カテーテル用ガイドワイヤーをはじめとする循環器系医療機器で世界的なシェアを有していますが、もともとは自転車用ワイヤーの製造を行う町工場でした。

自転車のブレーキワイヤーや変速機ワイヤーで培った「細く、しなやかで、かつ切れにくいワイヤー加工技術」が、血管内治療で用いられるガイドワイヤーと高い親和性を持っていたことが、医療分野参入の大きなきっかけとなりました。
この事例は、既存の加工技術を医療用途へと応用した好例といえます。


板金・金属加工業から医療機器へ

株式会社ナカニシ

ナカニシ

株式会社ナカニシは、歯科用ハンドピースで世界的に知られる企業ですが、創業当初は金属加工技術を中心とした精密部品メーカーでした。
高速回転技術や精密ベアリング技術といった、工業分野で培われたノウハウが、歯科医療の現場で求められる「軽量・高精度・高耐久」の機器開発につながっています。

このように、板金・金属加工業が持つ精密加工技術は、医療機器分野との親和性が高く、比較的スムーズな技術転用が可能な分野といえます。


樹脂加工業から医療機器へ

株式会社フジフレックス

フジフレックス

フジフレックスは、医療用チューブやカテーテル部材を製造する企業ですが、もともとは工業用樹脂チューブの加工メーカーでした。
工業用途で求められていた「柔軟性」「耐久性」「安定供給」といった要素は、医療用途においても重要であり、クリーン環境の整備や品質マネジメント体制(QMS)の構築を進めることで、医療機器分野への参入を果たしています。

樹脂加工業は、材料選定や押出成形といった基盤技術を活かしやすく、近年医療機器分野への参入が増えている業種の一つです。


電子・精密機器分野から医療機器へ

シスメックス株式会社

シスメックス

シスメックスは体外診断用医療機器の大手メーカーですが、創業当初は工業用計測機器や分析装置に近い技術領域からスタートしています。
電子制御、センサー技術、データ解析といった技術基盤が、臨床検査機器という医療分野へと発展しました。

電子・精密機器分野の中小企業にとっても、医療機器は「全く異なる世界」ではなく、延長線上にある市場といえる場合があります。


中小企業が医療機器メーカーへ転換できた理由

これらの事例に共通しているのは、「医療機器を作ろうとして技術を身につけた」のではなく、「すでに持っていた技術が医療分野に適合した」という点です。

医療機器分野は薬機法をはじめとする規制が厳しく、参入障壁が高いといわれます。しかし、

  • 既存技術の強みを明確に理解する
  • 医療用途としてのリスク・品質要求を整理する
  • 薬機法やQMSへの対応を段階的に進める

といったステップを踏むことで、中小企業であっても十分に参入・定着が可能であることが、これらの企業の歩みから読み取れます。


おわりに

「医療機器メーカーは最初から医療機器を作っていたのか?」という問いに対する答えは、「必ずしもそうではない」と言えるでしょう。
多くの中小企業が、自社のコア技術を起点として医療分野へと展開し、新たな価値を創出してきました。

医療機器産業は、今後も高齢化や医療高度化により成長が見込まれる分野です。自社の技術が医療にどう貢献できるのかを見つめ直すことが、次の一歩につながるのではないでしょうか。

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