第1回・第2回に続く本シリーズの第3回です。これまでの記事では、役員の刑事事件・営業所の所在地不明・経営事項審査の虚偽申請・専任技術者の名義貸し・決算書の偽造といった事例をご紹介してきました。今回も、公官庁が公式に公表した事例から、まったく異なるパターンを3つ取り上げます。
❶ 他の業者の許可通知書を「改ざん」して提出した無許可営業のケース
【宮城県の事例/宮城県公式ウェブサイトより】
令和2年5月から11月にかけて、石巻市および白石市内の工事3件について、建設業の許可を受けずに請負金額が法定基準以上の工事請負契約を締結し施工しました。これらの工事の受注に際し、発注者から建設業許可通知書の写しの提出を求められた際、許可を受けた建設業者であるかのように偽るため、過去に下請取引の際に入手した他の建設業者の許可通知書の写しを改変して提出し、発注者に許可を受けた建設業者であると誤認させたとして、建設業法第28条第2項および第3項に該当するとして監督処分を受けました。 Miyagi Prefectural Government
【ポイント】 無許可のまま工事を請け負うだけでも違法ですが、このケースではさらに他社の許可通知書を改ざんして提出するという悪質な行為が重なりました。無許可営業は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という厳しい罰則の対象です。「許可がなくてもバレなければいい」という考えは絶対に持ってはいけません。
❷ 現場の安全対策を怠り、労働者が挟まれ事故を起こしたケース
【宮城県の事例/宮城県公式ウェブサイトより】
令和4年9月2日に山形県内の解体工事現場で油圧ショベルによる整地作業を行わせるに当たり、誘導者を配置してその者に油圧ショベルを誘導させるなどの危険を防止するために必要な措置を講じなかった結果、労働者を油圧ショベルとコンテナの間に挟むなどの事故が発生しました。令和5年12月7日に労働安全衛生法違反により罰金刑の略式命令を受け、その刑が確定したとして、建設業法第28条第1項第3号に該当するとして指示処分を受けました。 Miyagi Prefectural Government
【ポイント】 安全対策の不備は、労働者の命に直結するだけでなく、建設業許可にも影響します。労働安全衛生法違反で罰金刑が科されると、建設業の許可に関する行政処分の対象となります。 VS Group「誘導者を置かなかった」というシンプルな作業手順のミスが、罰金刑と行政処分の両方を招いたこの事例は、現場管理の徹底がいかに重要かを示しています。
❸ 役員が廃棄物を違法に焼却し、営業停止処分を受けたケース
【宮城県の事例/宮城県公式ウェブサイトより】
令和2年6月18日に廃棄物を焼却し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に違反したとして、同年12月24日に大河原簡易裁判所から罰金刑の略式命令を受け、その刑が確定しました。このことが建設業法第28条第1項第3号に該当するとして、令和5年2月に建設業に係る営業の全部について3日間の営業停止処分を受けました。 Miyagi Prefectural Government
【ポイント】 廃棄物処理法は建設業法とは別の法律ですが、役員がこれに違反して刑事罰を受けると、建設業の監督処分にも連動します。建設現場から出る残材や廃材の処理は日常的な業務の一部ですが、「面倒だから現場で焼いてしまおう」という行為が会社全体の営業停止につながります。役員・従業員の一人ひとりの行動が、会社の許可を左右するのです。
シリーズを通じて見えてくる共通のリスク
第1回から今回まで、計9つの事例をご紹介してきました。改めて整理すると、許可取り消しや監督処分のリスクは、大きく3つの場面に集中しています。
①「人」に関するリスク——役員・従業員の刑事事件(交通事故・暴行・廃棄物違反など)
②「書類」に関するリスク——申請書・決算書の虚偽記載、届け出の漏れ
③「現場」に関するリスク——無許可営業、安全管理の不備、技術者の不正配置
不正行為等に対する監督処分に係る調査等は、原則として、当該不正行為等があった時から3年以内に行うものとされており、監督処分の内容については速やかに公表されます。 Gunma Prefecture一度公表されれば、取引先や発注者の目に触れることになり、社会的信用も大きく損なわれます。
日頃から法令遵守の体制を整え、少しでも不安な点があれば、早めに専門家へご相談ください。当事務所では建設業許可の維持・管理についても丁寧にサポートいたします。


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