前回の第1回では、役員の禁錮刑や営業所の所在地不明、経営事項審査の虚偽申請という3つの事例をご紹介しました。今回は第2回として、また異なる角度から実際の取り消し事例を3つ取り上げます。どれも「まさかうちが…」という身近なケースばかりです。ぜひ最後までご覧ください。
❶ 代表取締役の「暴行罪」で許可が取り消されたケース
【愛知県の事例/愛知県公式プレスリリースより】
愛知県は、令和6年2月27日付けで、愛知県知事許可の建設業者に対し、建設業法の規定に基づく処分(許可の取消し)を行いました。被処分者の代表取締役は、令和4年5月17日に名古屋簡易裁判所において刑法第208条(暴行)の罪により、罰金10万円の略式命令を受け、同年6月3日にその刑が確定しました。このことが建設業法第29条第1項第2号に該当するとして、とび・土工工事業および塗装工事業の一般建設業許可が取り消されました。 愛知県公式Webサイト
【ポイント】 「たった罰金10万円の暴行罪で許可が取り消されるの?」と驚かれる方も多いはずです。建設業法では、暴行・傷害・脅迫・背任などの刑法違反は、罰金刑であっても欠格要件に該当します。刑事事件は業務と無関係なプライベートの出来事であっても、会社の許可に直結するのです。役員の言動には、経営者として細心の注意が必要です。
❷ 専任技術者が「名義貸し」状態だったことによる営業停止処分のケース
【神奈川県の事例/神奈川県公式プレスリリースより】
神奈川県の建設業者(株式会社エスポート)は、令和2年11月以降に受注した5件の建設工事において、主任技術者を工事現場に配置すべきところ、資格要件を満たさない者を配置していました。また、令和5年1月以降に受注した岡山県・広島県・千葉県の4件の建設工事において、神奈川県川崎市の営業所に常勤して専らその職務に従事すべき営業所の専任技術者を主任技術者として配置し、実質的な主任技術者としての職務は、資格要件を満たさない者に行わせていました。 Kanagawa Prefectureこのことが建設業法違反に該当するとして、令和6年10月に7日間の営業停止処分が命じられました。
【ポイント】 「名前だけ専任技術者に登録して、実際の現場は別の人が管理する」という実態が問題視されました。営業停止処分は許可取り消しの手前の段階ですが、これに従わなければ即座に許可取り消しになります。資格者の「名義だけ借りる」運用は絶対に避けましょう。
❸ 許可更新時に「借入金を隠した決算書」を提出して取り消されたケース
【建設業許可申請.comが整理した監督処分事例より】
建設業許可の更新の際の添付書類において、借入金を記入せず虚偽の内容で申請したとして、罰金50万円の略式命令を受け、許可が取り消された事例があります。 Kensetsu-kinki
【ポイント】 「財務状況を少しよく見せたい」という気持ちから、決算書の数字を操作したり、借入金を隠して申請するケースが実際に起きています。専任技術者の経験年数を水増しして記載したり、欠格事由に該当する役員がいることを隠して誓約書を提出したりしたことが発覚すると、許可を取り消されることになります。全国では年間何件もこの事由による取消しが行われています。 local5「ちょっとくらい…」という油断が、会社の命取りになります。
処分を受けると役員全員が巻き込まれる
見落とされがちな点として、不利益処分による許可取り消しの場合、取消しになった法人だけでなく、法人の役員や政令使用人(いわゆる支店長)、株主等も対象になります。取消し処分を受けたときに役員だった方が在籍している他の法人でも許可を受けられなくなります。 local5一人の役員の問題が、会社全体と関係者全員を5年間縛ることになるのです。
まとめ:「知らなかった」では済まされない
今回ご紹介した3つの事例に共通しているのは、「自分には関係ない」と思いやすい状況から発生しているという点です。役員の私生活上のトラブル、現場技術者の運用ルール、更新時の書類の記載内容——いずれも日常業務の延長線上にあるリスクです。
許可を維持するためには、日頃からの体制整備と法令知識のアップデートが欠かせません。少しでも不安を感じた場合は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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