ふくしま医療機器開発支援センターを訪問して――医療機器メーカー出身の行政書士が感じた、その施設の価値

コラム

2026年8月18日、福島県郡山市にある「ふくしま医療機器開発支援センター」を訪問しました。

これまで、センターの皆さまとはオンラインで面談する機会をいただいていましたが、実際に現地を訪問するのは今回が初めてです。

私は医療機器メーカーでの勤務経験を活かし、医療機器分野を専門とする行政書士として、医療機器メーカーや、これから医療機器産業への参入を検討している企業の皆さまのお力になりたいと考えています。

今回の訪問も、「自分の経験を活かして、何か協力できることがあるのではないか」「少しでも医療機器産業の発展に貢献できれば」という思いから実現したものです。

そして実際にセンターを訪問してみて、改めて感じたことがあります。

それは、ふくしま医療機器開発支援センターは、医療機器メーカーにとって非常に利用価値の高い施設であるということです。

今回は、医療機器メーカーで勤務していた私自身の視点から、実際にセンターを訪問して感じたことを書いてみたいと思います。

ふくしま医療機器開発支援センターとは

まず、ふくしま医療機器開発支援センターについて簡単に紹介します。

ふくしま医療機器開発支援センターは、福島県郡山市にある医療機器開発支援のための施設です。

福島県では医療関連産業の集積を進めており、その拠点として整備された施設が、このふくしま医療機器開発支援センターです。

センターでは、医療機器の開発から安全性評価、事業化までを一体的に支援することを掲げています。公式サイトでは、安全性試験、事業支援、人材育成・トレーニングなどを主な機能として紹介しています。

特に印象的なのは、単に「相談に乗ってくれる支援機関」というだけではないことです。

医療機器の開発では、

  • 製品の設計
  • 試作品の製作
  • 電気的安全性の確認
  • EMC
  • 物性試験
  • 化学分析
  • 生物学的安全性評価
  • 性能評価
  • ユーザビリティ評価
  • 臨床現場を想定した評価
  • 薬事対応

など、非常に多くの検討や評価が必要になります。

ふくしま医療機器開発支援センターでは、こうした医療機器開発に関連するさまざまな試験・評価や支援を受けることができます。

つまり、医療機器を開発する企業にとって、「開発した製品をどのように評価するか」という段階まで含めて相談できる場所なのです。

初めて実際の施設を見て感じたこと

これまでオンラインでお話ししていたこともあり、センターがどのような施設であるかについては、ある程度理解しているつもりでした。

しかし、実際に現地へ行ってみると、その印象は大きく変わりました。
やはり、「実際に見る」ということには大きな意味があります。

建物そのものの規模だけではなく、施設内に整備されたさまざまな設備を見ることで、「ここまで医療機器開発を支援できるのか」と実感することができました。

特に印象に残ったのが、模擬手術室を含む、臨床現場を意識した設備です。
センターには、実際の手術室と同等の空間設備を備えた手術室があり、多種多様な医療機器が配備されています。外科手術や内視鏡下手術など、幅広い手技に対応できる環境が整備されています。
医療機器メーカーで開発業務を経験してきた私からすると、これは非常に大きな意味を持つ設備です。

医療機器は「作っただけ」では終わらない

医療機器の開発というと、「良い製品を作ること」が中心だと思われるかもしれません。

しかし、実際の医療機器開発では、それだけでは不十分です。

医療機器は、人の生命や健康に直接または間接的に関係する製品です。

そのため、「設計したとおりに動くのか」だけではなく、「安全に使用できるのか」、「想定した性能を発揮できるのか」、「実際の使用環境で問題なく使えるのか」、「医療従事者が適切に操作できるのか」、「長期間使用した場合に問題が生じないのか」といったさまざまな観点から検証する必要があります。

さらに、製品によっては生物学的安全性について評価する必要があります。
つまり、医療機器の開発では、「作る」ことと同じくらい、「確かめる」ことが重要なのです。
その「確かめる」という部分を支える環境が、ふくしま医療機器開発支援センターにはあります。

ユーザビリティという視点

今回、センターについて改めて考える中で、特に重要だと感じたのが「ユーザビリティ」です。

医療機器は、単に技術的に優れていればよいわけではありません。
実際に使用するのは医師、看護師、臨床工学技士などの医療従事者であり、製品によっては患者自身が使用することもあります。

そのため、「操作方法は分かりやすいか」、「誤操作が起こりにくいか」、「必要な情報が適切に表示されるか」、「医療現場の動線を妨げないか」、「緊急時にも適切に操作できるか」といった視点が重要になります。
これは、設計者が机上で考えるだけでは十分に評価できない部分です。
実際の使用環境に近い場所で、実際の使用者を想定しながら評価することに大きな意味があります。
ふくしま医療機器開発支援センターでは、ユーザビリティ試験も受託試験の一つとして位置付けられています。

医療機器開発において、ユーザビリティエンジニアリングの重要性が高まっている現在、このような環境を利用できることは、メーカーにとって大きなメリットではないでしょうか。

加速劣化試験など、「時間」を短縮して評価する

医療機器の中には、長期間使用されることを想定した製品もあります。
例えば、数年間使用する製品について、その製品が長期間にわたって安全に使用できることを確認しようとすると、単純に考えれば実際の時間をかけて評価しなければなりません。

しかし、製品開発では当然ながら時間的な制約があります。

そこで重要になるのが、加速劣化試験などの評価方法です。
一定の条件を設定することで、長期間の使用を想定した評価を短期間で行うことが可能になります。
こうした試験は、医療機器の安全性や耐久性を評価するうえで重要な役割を果たします。

センターには電気・物性・化学分析試験の設備が整備されており、耐久性能や環境試験、化学分析など、さまざまな評価に対応しています。公式サイトでも、医療機器の安全性・性能に関する多様な試験項目が紹介されています。

医療機器メーカーで開発を経験した立場からすると、「製品を作った後、どこでどのように評価するか」という問題は決して小さくありません。

自社ですべての試験設備を保有することは、企業規模によっては現実的ではありません。
だからこそ、こうした外部の専門施設を利用することには大きな意味があります。

生物学的試験を実施できる環境

もう一つ、医療機器メーカーにとって非常に重要なのが、生物学的安全性の評価です。

人体に接触する医療機器などでは、製品の材質や使用方法、接触期間などを踏まえて、生物学的安全性について適切に評価する必要があります。

ふくしま医療機器開発支援センターでは、生物学的試験にも対応しており、人体に直接使用する医療機器などの試作品について、大型動物を用いた安全性・有効性評価などを実施しています。

また、受託試験として、生物学的試験だけでなく、性能試験、ユーザビリティ試験、GLP試験、非生物試験、病理検査、血液検査などにも対応しています。
ここまで幅広い試験環境が一つの施設に集約されていることは、医療機器メーカーにとって非常に大きなメリットだと感じます。

「医療機器業界への新規参入企業」にも利用価値がある

今回、私がセンターについて特に注目しているのは、既存の医療機器メーカーだけではなく、これから医療機器業界に参入しようとする企業に対する支援です。

医療機器業界への参入を考える企業にとって、最初の壁になるのが「何をすればよいのか分からない」という問題です。

「この製品は医療機器になるのか?」

「医療機器として販売するには何が必要なのか?」

「どのような試験が必要なのか?」

「どのような性能を確認すればよいのか?」

「薬事申請にはどのような資料が必要なのか?」

「医療現場では本当に使ってもらえるのか?」

といった疑問が次々と出てきます。

医療機器メーカーに長年勤務してきた私自身も、医療機器開発が単純なものではないことを実感してきました。
技術だけでも、薬事だけでも、営業だけでも、医療機器事業は成立しません。
さまざまな専門領域をつなぎ合わせる必要があります。
その意味で、開発から安全性評価、事業化までを一体的に支援するセンターの存在は、これから医療機器産業への参入を目指す企業にとって、非常に心強いものだと思います。

公式サイトでも、センターは「新規参入企業」に対する薬事・保険相談や製品のユーザー評価に対応していることを案内しています。

私自身ができることは何か

では、そのような施設に対して、私自身は何ができるのでしょうか。
今回の訪問では、改めてそのことを考えました。
私はこれまで、医療機器メーカーで製品開発と薬事業務の両方に携わってきました。

開発側では、医療機器の設計開発、試作、技術文書作成などに携わり、薬事側では国内外の医療機器規制への対応、製品登録、QMS、リスクマネジメント、性能評価などに関わってきました。
その経験から感じているのは、医療機器メーカーにとって、技術と規制をつなぐ人材が非常に重要であるということです。

例えば、開発担当者からすると、「この試験はなぜ必要なのか?」、「なぜこの資料が必要なのか?」、「薬事上、どのような説明が必要なのか?」という疑問が生じることがあります。

一方、薬事担当者からすると、「この製品の技術的特徴は何なのか?」、「なぜこの設計にしたのか?」、「この試験結果は何を示しているのか?」ということを理解する必要があります。

開発と薬事。

この二つを経験してきたことは、今後、行政書士として医療機器分野を支援するうえで、一つの強みになると考えています。

支援機関と専門家がつながることの意味

今回の訪問を通じて、もう一つ強く感じたことがあります。

それは、一つの組織だけですべてを支援する必要はないということです。

むしろ、医療機器産業を発展させるためには、それぞれの専門家や支援機関が持つ強みを組み合わせることが重要なのではないでしょうか。
ふくしま医療機器開発支援センターには、医療機器の試験・評価や臨床現場を想定した環境、医療従事者のトレーニングなど、非常に大きな強みがあります。

一方、私自身は行政書士として、薬機法を中心とした規制対応や、医療機器メーカーでの実務経験を活かした支援を行っていきたいと考えています。
もちろん、私一人ですべての問題を解決できるわけではありません。
だからこそ、専門性を持った組織や企業、専門家とつながることが重要だと考えています。
今回の訪問も、単に「施設を見学する」という目的だけではありません。

「自分に何ができるのか」、「どのような企業を支援できるのか」、「センターとどのような形で協力できるのか」

そうしたことを考える機会でもありました。

福島県だけではなく、日本の医療機器産業を支える施設

「ふくしま医療機器開発支援センター」という名前から、福島県内の企業を中心に支援している施設という印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、実際にはその役割はもっと広いものです。
医療機器産業は、地域だけで完結する産業ではありません。
東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、福島、宮城、愛知、大阪、兵庫など、日本各地に医療機器メーカーや関連企業があります。
また、これから医療機器産業への参入を検討している企業も全国に存在します。

そのような企業にとって、専門的な試験設備や臨床環境を利用できる場所が全国どこにあるのかということは、非常に重要な情報です。
そう考えると、福島県郡山市にこのような施設があることは、福島県にとってだけでなく、日本の医療機器産業全体にとっても大きな意味があるのではないでしょうか。

医療機器産業への参入を考えている企業の方へ

もし、この記事を読んでいる方の中に、「自社の技術を医療分野に活用できないか?」、「医療機器産業への参入を考えている」、「医療機器を開発しているが、どのような試験を行えばよいのか分からない」、「薬事対応について相談したい」という企業の方がいらっしゃれば、まずは専門の支援機関に相談することをおすすめします。

医療機器産業への参入は、決して簡単ではありません。

しかし、最初からすべてを自社だけで抱える必要もありません。
医療機器開発に必要な設備や専門知識を持った支援機関を活用し、必要に応じて薬事、技術、臨床、知財、事業化など、それぞれの専門家と連携していく。
そうすることで、参入へのハードルを少しずつ下げていくことができるのではないかと思います。

今回の訪問を今後の活動につなげて

今回、初めて実際にふくしま医療機器開発支援センターを訪問しました。

オンラインでお話ししていたときには分からなかった施設の規模や設備、そしてそこで働く方々の活動を実際に見ることができ、とても有意義な訪問となりました。
何より、医療機器メーカーで勤務していた私自身が見ても、「この施設は医療機器メーカーにとって利用価値が非常に高い」と感じました。
医療機器の開発には、技術、品質、安全性、薬事、臨床、事業化など、多くの要素が関係します。
その一つひとつについて、企業だけですべてを抱えるのではなく、専門的な設備や知識を持つ支援機関を積極的に活用することが、これからますます重要になるのではないでしょうか。

私自身も、2026年9月の行政書士事務所開業後、医療機器メーカーで培ってきた経験を活かし、医療機器業界に携わる企業の皆さまのお力になれるよう活動していきたいと思っています。
そして、福島県をはじめとする地域の医療機器産業がさらに発展していくために、自分にできることは何なのか。
今回の訪問を一つのきっかけとして、これからも考え続けていきたいと思います。

ふくしま医療機器開発支援センターの皆さま、このたびはお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
今後とも、何かお力になれることがありましたら、ぜひご一緒させていただければと思います。

ふくしま医療機器開発支援センター

ふくしま医療機器開発支援センターの公式サイトでは、施設の概要、各種試験、事業支援、人材育成・トレーニング、施設利用の流れなどが詳しく紹介されています。
医療機器メーカーの方だけでなく、これから医療機器産業への参入を検討されている企業の方にも、ぜひ一度ご覧いただきたい施設です。

ふくしま医療機器開発支援センター 公式サイト

所在地:福島県郡山市富田町字満水田27番8

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