GVP省令における「修正・是正・予防」の違いとは│医療機器メーカー経験者の行政書士が解説

QMS省令. ISO 13485, 薬機法, 医療機器 コラム

GVP省令について説明をすると、ほぼ必ず聞かれる質問があります。

「修正、是正、予防って、何が違うのですか?」
「全部“対応する”という意味では同じではないですか?」

確かに、言葉だけを見ると似た印象を受けます。
しかし、GVP省令においてこの3つは明確に役割が異なり、区別できていないと「形だけGVPをやっている状態」に陥りやすくなります。

本コラムでは、
・修正(Correction)
・是正(Corrective Action)
・予防(Preventive Action)

の違いを、考え方・目的・具体例の順で解説します。


なぜGVP省令では「3つ」を区別するのか

まず前提として、GVP省令の目的は単なるトラブル対応ではありません。
市場で使われる医療機器の安全性を、継続的に高めることが本質です。

そのため、

  • 起きた問題をとりあえず止める
  • なぜ起きたかを考えて再発を防ぐ
  • まだ起きていない問題を未然に防ぐ

という時間軸の異なる対応を区別して管理する必要があります。

これを整理したものが、「修正」「是正」「予防」という考え方です。


修正(Correction)とは何か

「今起きている問題」を止める行為

定義の考え方

修正とは、すでに発生している不適合や問題に対し、その場で影響を除去する対応です。

ポイントは、
原因の追究は含まれない
応急処置的な対応

という点です。


医療機器の例

  • 使用説明書に誤記が見つかったため、正しい記載に差し替える
  • 出荷済み製品にラベル貼付ミスがあり、訂正シールを送付する
  • 医療機関からの苦情に対し、個別に説明・謝罪を行う

これらはすべて、「今ある問題」を一旦収めるための行為です。


修正だけでは不十分な理由

修正は重要ですが、修正だけでは安全性は向上しません
なぜなら、

  • なぜ誤記が起きたのか
  • なぜラベルミスが繰り返されるのか

といった根本原因に触れていないからです。

ここで次に必要になるのが「是正」です。


是正(Corrective Action)とは何か

「再発させない」ための対応

定義の考え方

是正とは、
発生した不適合の原因を特定し、同じ問題が再び起こらないようにする対応です。

修正との最大の違いは、
原因分析が必須
再発防止が目的

という点です。


医療機器の例

  • 誤記が発生した原因を調査し、説明書レビュー工程を見直す
  • ラベルミスの原因が作業手順にあったため、作業標準を改訂する
  • 苦情が特定ロットに集中していたため、製造条件を変更する

これらはすべて、
「次から同じことが起きないようにする」ための行為です。


GVP省令における重要性

GVP省令では、安全性情報を評価した結果、必要な是正措置を講じることが明確に求められています。

単に報告して終わり、その場を収めて終わり、ではGVPとして不十分と判断される可能性があります。


予防(Preventive Action)とは何か

「まだ起きていない問題」を防ぐ対応

定義の考え方

予防とは、将来発生する可能性のある不適合やリスクを予測し、事前に防ぐ対応です。

ポイントは、以下の2点です。
・問題はまだ起きていない
リスクベースの考え方


医療機器の例

  • 類似製品で事故報告が増えているため、自社製品の注意事項を事前に強化
  • 使用環境の変化(在宅利用増加)を踏まえ、誤使用防止設計を追加
  • 海外規制動向を参考に、将来的なリスクを見越して設計変更を検討

これらは、
「起きてから対応する」のではなく、「起きる前に潰す」行為です。


なぜ予防が重要なのか

医療機器は、一度重大事故が起きると、

  • 患者への影響
  • 社会的信用の低下
  • 事業継続リスク

が非常に大きくなります。

そのためGVP省令では、安全性情報の傾向分析や予測的視点が強く求められています。


3つの違いを一目で整理すると

区分タイミング目的キーワード
修正問題発生後すぐ影響を止める応急処置
是正問題発生後再発防止原因分析
予防問題発生前未然防止リスク管理

よくある失敗パターン

修正で終わってしまう

「とりあえず説明書を直した」「謝罪文を出した」で終わり、原因分析や再発防止が行われていないケースです。

是正と予防が混同されている

「是正」と言いながら、実際は単なる注意喚起で終わっている、または「予防」と言いながら根拠が曖昧なケースです。


GVP省令を正しく運用するための視点

GVP省令において重要なのは、用語を暗記することではありません。

  • いま何が起きているのか
  • なぜ起きたのか
  • 次に何が起きそうか

この3つを時間軸で整理し、記録として残すことが本質です。

その結果として、修正・是正・予防が自然と区別される運用になります。


おわりに

GVP省令における「修正・是正・予防」の違いは、単なる言葉の違いではなく、医療機器の安全性をどう高めていくかという考え方の違いです。

修正だけでは、安全は積み上がりません。
是正があって初めて再発が防げ、予防があってこそ重大事故を未然に防げます。

GVP省令は難しい制度ではありますが、この3つの違いを理解することで、“守るための規制”から“価値を生む仕組み”へと捉え方が変わるはずです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました