薬機法・QMS省令・QMS体制省令の関係について│医療機器メーカー経験者の行政書士が解説

薬機法・QMS省令・QMS体制省令の関係は、「大枠を決める法律(薬機法)」「具体的なやり方を決めるルール(QMS省令)」「そのルールを回せる体制を決めるルール(QMS体制省令)」という三層構造で考えると分かりやすくなります。

薬機法:一番上にある「大本のルール」

薬機法は、医療機器や体外診断用医薬品について、「品質・有効性・安全性を確保しなさい」という国としての最低限の約束事を決めている法律です。
その中で、「製造管理・品質管理は省令で定める基準(=QMS省令)に適合させること」「その基準を守るための体制(=QMS体制省令)を整えること」が義務になっています。

たとえば、とある企業が新しく医療機器の製造販売業許可を取りたいとき、まず前提としてこの薬機法に基づき、「ちゃんとした品質管理の仕組みと体制を持っている会社か」がチェックされます。ここで「仕組み」にあたるのがQMS省令、「体制」にあたるのがQMS体制省令です。

QMS省令:実務レベルの「やり方マニュアル」

QMS省令は、正式には「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」といい、品質マネジメントシステム(QMS)の中身を細かく決めています。
ISO13485をベースに、日本の薬機法の要求を組み込んだもので、設計・購買・製造・検査・不適合管理・CAPA・市販後の情報の反映など、製品ライフサイクル全体を網羅しています。

例えば、ある会社が体外診断薬のロットで不具合を見つけた場合、QMS省令は「不適合ロットの隔離」「原因調査」「再発防止策の決定」「手順書や設計への反映」「記録の保存」といった一連の流れを求めます。
薬機法が「安全上問題のある製品を市場に出してはいけない」とゴールを示し、QMS省令が「そのために日々どんな手順と記録を持つべきか」を具体的に示しているイメージです。

QMS体制省令:QMSを動かす「組織と人」のルール

QMS体制省令は、「QMS省令をきちんと守れるだけの組織体制になっているか」を定める省令です。
医療機器・体外診断用医薬品の製造販売業許可を取るためには、この体制省令に適合していることが必須条件になっており、組織図・権限・責任者の配置などが評価されます。

三つをまとめたイメージと簡単な事例

三つの関係を日常のイメージに置き換えると、次のようになります。

  • 薬機法:この会社は安全な医療機器を世に出す責任があります、という「会社の約束」
  • QMS省令:その約束を守るための日々の仕事の「手順書・チェックリスト」
  • QMS体制省令:手順書どおりに動けるように「人員配置と組織」を決めるルール

実際の事例として、ある企業が新しい医療機器の承認を取る際、申請書類の審査だけでなく「QMS適合性調査」が行われます。
ここでは、

  • 手順や記録がQMS省令に合っているか(仕組みの妥当性)
  • その手順を動かす責任者・担当者がQMS体制省令に沿って配置されているか(体制の妥当性)
    が確認され、両方が満たされて初めて、薬機法上「この会社は医療機器を任せてよい」と判断されます。

初心者の方は、まず「薬機法=大枠」「QMS省令=仕事の中身」「QMS体制省令=人と組織」と三つに分けてイメージすると、全体像をつかみやすくなります。次のステップとして、自社の業務フローに「どの条文が関係しているか」を紐づけていくと、より実務に落とし込みやすくなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました