医療機器を扱う人のための薬機法入門│医療機器メーカー経験者の行政書士が解説

QMS省令. ISO 13485, 薬機法, 医療機器 コラム

医療機器を扱うなら必ず知っておきたい「薬機法」の基本

医療機器の企画・開発・販売、またはそれに関わる情報発信に携わる人にとって、まず押さえておきたいのが「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」です。医薬品全般を規制する法律として知られていますが、その中には医療機器に特化したルールも多く盛り込まれています。高度な技術が必要とされ、人の生命に直接かかわる可能性がある医療機器だからこそ、国は厳密な管理と正確な情報提供を求めています。今回は、医療機器と薬機法の関係に焦点を当てながら、医療機器メーカー出身者が解説します。

薬機法の目的

薬機法の目的は一言でいうと、医薬品や医療機器の「品質・有効性・安全性」を確保し、保険衛生の向上を図ることです。ものづくりのルール、安全性の審査、販売方法、広告表現まで幅広い領域をカバーしています。「医療機器」はこの法律の中で重要な位置づけを占めており、特に安全性確保の観点から細かく分類と規制が行われています。

医療機器のクラス分類

医療機器の特徴として、薬機法ではリスクに応じた4段階のクラス分類(クラスI〜IV)が採用されています。

クラスⅠ一般医療機器届出
クラスⅡ管理医療機器第三者認証or大臣承認
クラスⅢ高度管理医療機器第三者認証or大臣承認
クラスⅣ高度管理医療機器大臣承認

クラスが上がるほど、国の審査や承認が厳密になり、製造方法や品質管理も高度なものが求められます。これは、医療機器が故障したり誤作動したりした場合の影響が大きいためです。

少し実務の話をします(薬機法の初学者は飛ばしても大丈夫です)。
新製品の開発では、「医療機器クラスの確定」に思いのほか時間を要することが少なくありません。たとえば、後発医療機器として進めていたにもかかわらず適切な類似品が見つからない、一般的名称が決まらない──といった理由から、クラスの確定が難航するケースが多く見られます。
しかし、この工程が遅れると、後続の開発業務全体にも大きな影響が及びます。クラスが不明確なまま申請を進めてしまえば、最悪、回収や謝罪対応、業績悪化といった深刻な事態に発展する可能性も否定できません。
また、取得済みの業許可と実際に必要な許可が一致しないケースも起こり得ます。たとえば、第二種製造販売業許可で開発を進めていたものの、実際にはクラスⅣ医療機器であった場合、第一種製造販売業許可の再取得が必要となり、販売計画は大幅に遅延します。
このように、医療機器のクラス選定は一見地味ながら、少しの判断ミスが大きなリスクや遅延につながる、とても重要なプロセスです。
クラス分類に関してご不明点やお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

製造・販売には厳格な許可と体制が必要

医療機器を製造したり販売したりするには、薬機法で定められた業許可が必要です。
たとえば「製造販売業許可」「製造業登録」「販売業許可」などがあり、それぞれ求められる管理体制や業務範囲が異なります。

特に製造販売業者には、「製品を市場に出した後の安全対策」を担う責任があります。市場で不具合が起きた場合の報告や、リスク管理の仕組み(QMS:品質マネジメントシステム)の運用など、企業側で継続的に安全を見守る体制が求められます。

医療機器の広告は“過大表現禁止”がとても重要

医療機器は製品そのものが高度に管理されていますが、それと同じくらい重要なのが広告規制です。薬機法では、根拠のない効果をうたうこと、事実と異なる表現、医療機器でないものを医療機器であるかのように表示することを禁止しています。

たとえば、次のような表現はNGです。

  • 医学的に証明されていない効果を断言する
  • 実際の性能を超えた誇張表現
  • 誤解を生む表現(「医師が認めた効果」などの曖昧な表現)

また、SNSで個人が紹介する場合でも、この広告規制は適用されます。つまり、企業の公式広告だけでなく、インフルエンサーや個人の投稿も薬機法の対象となる点は、現代の情報環境では特に重要です。

事例の話をしましょう(薬機法の初学者は飛ばしても大丈夫です)。
一例として、薬事日報に掲載された記事でも、薬機法違反の広告に対して措置命令が出されたケースが確認できます。これまで医薬品メーカーでは摘発事例がありましたが、医療機器メーカーに措置命令が出されたのは初めてとされています。
私見になりますが、日本ではまず医薬品に関する規制が成熟し、その後になって医療機器へと規制の網が広がっている印象があります。

「すでに広告されている内容だから安全」「他社もやっているから大丈夫」とは決して言えません。むしろ、これから医療機器分野でも広告規制が一段と強化されていく可能性が高いと考えられます。したがって、企業・個人を問わず、医療機器に関わる情報発信にはこれまで以上に慎重な姿勢が求められるでしょう。

薬機法の理解は「信頼性」を高める武器になる

医療機器を扱う人にとって、薬機法は単なる“守るべきルール”ではありません。
適正な広告や正確な情報提供は、消費者や医療従事者、取引先からの信頼を高める大きな要素になります。逆に誇張や誤解を招く表現は、ブランドイメージを損なうだけでなく、法的リスクにもつながります。

法律の枠を理解し、その中で魅力を伝える方法を工夫することは、安全性と誠実さのある企業風土へつながります。

薬機法のまとめ

医薬品・医療機器・化粧品などの「品質・有効性・安全性」を確保する法律。

医療機器はリスクに応じてクラス分類され、必要な審査や許可が異なる。

誤解を招く広告・根拠のない効果の宣伝を禁止。

本記事は医療機器メーカーでの実務経験をもとに、初心者でも理解できる内容にまとめています。

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