医療機器と聞くと、多くの方はCTスキャナーやペースメーカーのような「モノ」を想像されるでしょう。しかし近年、ソフトウェア単体でも医療機器として規制される時代になりました。今回は、ハードウェア医療機器とソフトウェア医療機器の違いについて、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の観点から解説します。
ハードウェア医療機器とは
ハードウェア医療機器とは、物理的な「形」を持つ医療機器のことです。薬機法では、医療機器を「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等」と定義しています。
具体例としては、以下のようなものがあります。
- 診断機器: X線装置、超音波診断装置、血圧計
- 治療機器: 人工呼吸器、透析装置、電気メス
- 生体情報モニタ: 心電計、パルスオキシメータ
- 体内埋込み機器: ペースメーカー、人工関節
これらは目に見える物理的な装置であり、従来から医療機器として認識されてきたものです。
プログラム医療機器
一方、ソフトウェア医療機器は、2014年の薬機法改正により「プログラム」も医療機器の定義に含まれることが明確化されました。これにより、ソフトウェア単体でも医療機器として規制されるようになったのです。
厚生労働省の通知では、「プログラム医療機器」として、疾病の診断、治療、予防に使用されることが目的とされているプログラムが該当するとされています。
具体例としては、以下のようなものがあります。
- 画像診断支援ソフトウェア: CT画像からがんの疑いがある部位を検出するAIプログラム
- 疾患リスク計算プログラム: 患者データから心血管疾患のリスクを算出するソフトウェア
- 治療計画支援システム: 放射線治療の照射計画を作成するプログラム
- 遠隔診療支援アプリ: 医師の診断を補助する機能を持つアプリケーション
両者の主な違い
1. 形態の違い
最も分かりやすい違いは、物理的な形の有無です。ハードウェアは手に取れる「モノ」ですが、ソフトウェアはデータとして存在します。ただし、ソフトウェアもスマートフォンやパソコンなどのハードウェア上で動作する必要があります。
2. 規制上の取り扱い
薬機法上、両者とも「医療機器」として規制されますが、審査のポイントが異なります。ハードウェアでは材料の安全性や機械的強度が重視されるのに対し、ソフトウェアではアルゴリズムの妥当性やサイバーセキュリティ対策が重視されます。
3. 更新・改良の容易さ
ソフトウェアはアップデートにより機能改善や不具合修正が比較的容易です。一方、ハードウェアは物理的な改修が必要となるため、更新には限界があります。ただし、ソフトウェアのアップデートも医療機器としての承認範囲内で行う必要があり、大幅な変更には再審査が必要となることがあります。
4. リスク分類
両者とも、人体へのリスクに応じてクラスI(低リスク)からクラスIV(高リスク)に分類されます。例えば、単純な計算を行うだけのソフトウェアは低リスクですが、診断結果に直接影響を与えるAI診断ソフトは高リスクに分類される可能性があります。
ハイブリッド型も増加
近年では、ハードウェアとソフトウェアが一体となった医療機器も増えています。例えば、高度な画像処理AIを搭載したCT装置や、スマートフォンと連動する血糖測定器などです。これらは両方の特性を併せ持つため、規制上も両面からの評価が必要となります。
まとめ
ソフトウェア単体も医療機器に
2014年の薬機法改正で、AI診断ソフトなどのプログラムも医療機器として規制対象になりました。
審査ポイントが異なる
ハードウェアは材料の安全性、ソフトウェアはアルゴリズムの妥当性やサイバーセキュリティが重視されます。
ハイブリッド型が増加中
ハードウェアとソフトウェアが一体化した医療機器が増え、両面からの評価が必要です。

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