はじめに
「この製品は医療機器になりますか?」
医療機器業界への参入を検討している企業から、私が最も多く受ける相談の一つです。
例えば、
- 家庭用マッサージ器
- 電動歯ブラシ
- ブルーライトカット眼鏡
- サポーター
- 美容機器
- 健康管理アプリ
これらは一見すると似たような製品ですが、薬機法上の扱いはすべて同じではありません。
中には医療機器に該当するものもあれば、雑貨(いわゆる雑品)として販売できるものもあります。また、同じ種類の製品であっても、広告表現や使用目的によって医療機器に該当するかどうかが変わることもあります。
では、何がその境界を決めているのでしょうか?
本コラムでは、「医療機器と雑品の境界」というテーマについて、薬機法の考え方をもとに解説します。
「雑品」という法律上の分類は存在しない
まず知っておきたいのは、「雑品」という言葉は薬機法上の正式な分類ではないということです。
薬機法には、
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
という区分があります。
一方、「雑品」とは、これらのいずれにも該当しない製品を実務上まとめて呼ぶ際の通称です。
医療機器を決める最も重要なポイントは「使用目的」
薬機法では、医療機器は概ね次のように定義されています。
人または動物の疾病の診断、治療、予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を与えることを目的とした機械器具等
この中で最も重要なのは、「何を目的として販売するか」です。
つまり、同じ構造の製品であっても、疲労回復、血行促進、肩こり改善などを標榜すれば、医療機器に該当する可能性があります。
逆に、リラックス、心地よい刺激、リフレッシュ、といった表現であれば、医療機器に該当しない可能性があります。
このように、薬機法では「構造」だけでなく、「標ぼうする効能・効果・使用目的」が極めて重要になります。
「構造・原理」も重要な判断材料
もちろん、目的だけではありません。
例えば、単なるシリコン製のローラーであれば雑貨として販売できることがあります。
しかし、電気刺激を与える、超音波を照射する、レーザーを照射するなど、人の身体へ積極的に作用する構造を持つ場合は、医療機器として評価される可能性が高くなります。
つまり、使用目的、構造、動作原理を総合的に判断して医療機器該当性が決まります。
美容機器は境界が最も難しい分野
近年、相談が増えているのが美容機器です。
例えば、お肌を綺麗にしたりムダ毛ケアを行う、EMS機器、LED美容器、RF機器、光美容器などがありますよね。
「美容目的だから医療機器ではない」と考えられがちですが、必ずしもそうではありません。
例えば、「肌を引き締める」という表現だけなら美容機器として扱われることがあります。
一方、「ニキビを治療する」「皮膚疾患を改善する」「創傷を治癒する」などの表現になると、医療機器として評価される可能性が高まります。
このように、美容と医療の境界は非常に近く、慎重な判断が必要です。
「医療機器ではありません」と書けば大丈夫?
時々、「医療機器ではありません。」と表示すれば問題ないのではないか、という質問を受けます。
しかし、これは誤解です。
薬機法では、実態で判断されます。
たとえ医療機器ではないと表示していても、商品の説明、パンフレット、販売方法、広告、ホームページ、動画、SNSなどから総合的に判断し、医療機器に該当すると評価されれば、薬機法の対象となります。
「書いてあること」だけではなく、「企業が何を目的として販売しているか」が重要なのです。
医療機器該当性判断は誰が行うのか
最終的な判断は行政が行います。
実務上は、厚生労働省、都道府県、PMDAの通知や過去の事例を参考に検討することになります。
判断が難しい場合には、上記機関へ相談しながら進めるケースも少なくありません。
また、過去に医療機器と判断された製品と類似しているかどうかを確認することも重要です。
「医療機器ではない」は参入しやすいことを意味しない
医療機器に該当しなければ、薬機法の規制を受けないため、「参入しやすい」と考えられることがあります。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
雑貨として販売する場合でも、
- 消費生活用製品安全法
- 景品表示法
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 電気用品安全法(対象製品の場合)
- 個人情報保護法(アプリ等の場合)
など、他の法令への対応が必要になることがあります。
また、医療機器でないからといって、安全性の確保や品質管理が不要になるわけではありません。
市場で信頼される製品を提供するためには、法令の有無にかかわらず、品質を重視した設計・製造・情報提供が求められます。
おわりに
医療機器と雑品の境界は、決して「見た目」で決まるものではありません。
薬機法では、
- 使用目的
- 効能・効果
- 構造・原理
- 広告・標ぼう
- 販売方法
などを総合的に見て判断されます。
そのため、「競合製品が雑品として販売されているから」「海外では医療機器ではないから」といった理由だけで判断することは危険です。
医療機器該当性の判断を誤ると、許認可が必要な製品を無許可で販売してしまうリスクや、広告表現が薬機法上問題となるリスクにつながります。
一方で、開発初期の段階から薬機法を意識して製品コンセプトや広告表現を設計すれば、余計な手戻りを防ぎ、スムーズな事業化につながります。
「医療機器か、それとも雑品か」ももちろん重要ですが、「なぜそのように判断されるのか」を理解しようとする姿勢を癖付けましょう。

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