「薬機法だけ守れば大丈夫」は誤解です。

QMS省令. ISO 13485, 薬機法, 医療機器 コラム

医療機器製造販売業者が知っておくべき関連法令


はじめに

医療機器製造販売業の許可を取得しようとすると、多くの企業が最初に勉強するのが薬機法です。
さらにQMS省令やGVP省令を理解し、品質管理や安全管理体制を整備していきます。
しかし実際には、

薬機法だけを守っていれば事業が成り立つわけではありません。

医療機器メーカーは、多くの法律を同時に遵守しながら事業を行っています。

本記事では、薬機法以外に関係する主な法律と、その関係性について解説します。


①労働安全衛生法

QMSでは教育訓練が必須です。
しかし、長時間教育、残業による教育、深夜教育などを続ければ、労働安全衛生法や労働基準法上の問題になる可能性があります。
品質を守るために社員の健康を損ねては本末転倒です。


②労働基準法

内部監査前になると、休日出勤、残業が続く企業もあります。
しかし、監査対応だからといって、労働基準法の例外になることはありません。
QMSを維持することと、働き方改革は両立させる必要があります。


③個人情報保護法

市販後安全監視では、患者情報、病院情報、医師情報などを取り扱います。
これらは個人情報保護法との関係が生じます。
GVP省令では情報収集が求められますが、だからといって自由に個人情報を取得・共有できるわけではありません。


④製造物責任法(PL法)

医療機器で事故が発生すると、薬機法上の不具合報告だけでなく、PL法上の責任も問題になります。
QMSは、PL訴訟にならないための仕組みともいえるでしょう。


⑤独占禁止法

意外ですが、共同開発、共同購買、価格情報交換などでは、独占禁止法に抵触する可能性があります。
医療機器業界は共同研究が多いため注意が必要です。


⑥下請法

製造を外部委託する企業では、協力会社との関係も重要です。
例えば、QMSでは供給者管理が要求されます。
しかし、無理な改善要求、一方的な仕様変更、費用負担の押し付けなどは、下請法違反となる可能性があります。
品質要求と法令遵守は両立しなければなりません。


⑦不正競争防止法・営業秘密

QMSでは、設計変更履歴、リスク分析、試験データなど、多くの技術情報を管理します。
これらは営業秘密にも該当します。
情報管理が不十分で漏えいすれば、競争力を失うだけではありません。
営業秘密管理体制としても問題になります。


法律は「点」ではなく「面」で考える

医療機器業界では、薬機法だけを知っていても十分ではありません。

品質保証、安全管理、法務、人事、個人情報、知的財産など、様々な法令が重なり合って初めて適切な事業運営が実現します。

例えばQMS省令に沿って品質管理を徹底しようとしても、労働法令や個人情報保護法を軽視してしまえば、新たなコンプライアンスリスクを生む可能性があります。逆に、会社法上の役員権限を理解せずに品質責任者へ過度な権限を与えると、組織運営が混乱することもあります。

つまり、「品質を守ること」と「他の法令を守ること」は対立するものではなく、両立させるべきものなのです。


おわりに

医療機器製造販売業者が遵守すべき法令は、薬機法だけではありません。

事業が成長するにつれ、

  • 契約
  • 人事
  • 製造委託
  • 海外展開
  • 情報管理

など、関係する法令はさらに増えていきます。

薬機法やQMS省令を正しく理解することはもちろん重要ですが、それらを他の法令と矛盾なく運用できる体制を構築することが、真のコンプライアンスにつながります。

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