はじめに
福島県相馬市と新地町は、東日本大震災からの復興を経て、新たな発展の局面を迎えています。新地駅周辺のスマートコミュニティ事業や釣師防災緑地公園の整備、相馬港の復興など、両地域では多くの建設プロジェクトが進行しています。このような地域特性の中で、建設業を営む事業者にとって、建設業許可の取得は事業拡大の重要な鍵となります。
本コラムでは、相馬市・新地町で建設業を営む皆様が直面しやすい課題を踏まえながら、建設業許可取得のポイントを分かりやすく解説いたします。
相馬市・新地町でよくある困りごと
復興工事の受注拡大に伴う許可の必要性
震災からの復興が一段落した現在でも、防災関連施設の維持管理や新規開発事業など、公共工事の機会は継続しています。これまで500万円未満の工事のみを請け負ってきた事業者様が、元請業者から「建設業許可を取得してほしい」と依頼されるケースが増えています。
特に、新地町では新地駅周辺の整備が完了し、今後は施設の維持管理や追加開発が見込まれます。相馬市でも相馬港周辺の水産関連施設や、松川浦エリアの観光施設整備など、継続的な建設需要があります。このような機会を逃さないために、建設業許可の取得が急務となっているのです。
家族経営から法人化への移行
相馬・新地地域では、代々続く家族経営の建設業者が多く存在します。創業者である父親や祖父が個人事業主として建設業許可を取得していたものの、世代交代や事業拡大に伴い法人化を検討される際、「父の許可番号を引き継げるのか」「新たに取り直す必要があるのか」といったご相談をよく受けます。
個人事業主の許可は、原則として本人にのみ帰属するため、法人化する場合は新たに法人として建設業許可を取得する必要があります。ただし、一定の要件を満たせば承継が可能な場合もありますので、専門家への相談をお勧めします。
近隣地域との連携と営業エリアの拡大
新地町は宮城県との県境に位置し、仙台市からも比較的近い立地です。また、相馬市は相馬エリアの中心都市として、南相馬市や飯舘村などとの連携も活発です。事業エリアを拡大する際、「福島県知事許可で宮城県内の工事はできるのか」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論から申し上げますと、福島県知事許可であっても、福島県外での工事施工は可能です。許可の区分は営業所の設置場所によって決まるものであり、工事施工地域を制限するものではありません。
建設業許可の種類と選び方
建設業許可には、営業所の所在地と下請契約の規模によって、4つのパターンがあります。
営業所の所在地による区分
①福島県知事許可
福島県内のみに営業所を設ける場合
例:本社が相馬市のみ、または本社が相馬市で支店が新地町にある場合
②国土交通大臣許可
福島県以外にも営業所を設ける場合
例:本社が相馬市にあり、支店が宮城県仙台市にもある場合
ここで注意すべきは、「営業所」の定義です。建設業における営業所とは、工事の見積もり、契約締結、入札参加などの実質的な営業活動を行う拠点を指します。登記上のみの支店や、単なる作業所、工事事務所は営業所に該当しません。
相馬市・新地町で事業を営む多くの事業者様は、まず「福島県知事許可」から取得することになるでしょう。
下請契約の規模による区分
①一般建設業許可
元請として下請に出す金額の合計が4,000万円未満(建築一式工事は6,000万円未満)の場合 または、下請として工事を請け負う場合
②特定建設業許可
元請として下請に出す金額の合計が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)の場合
建設業許可取得の5つの要件
建設業許可を取得するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
要件1:経営業務の管理責任者(常勤役員等)
建設業の経営経験を有する常勤の役員等を配置する必要があります。
主な要件
- 建設業に関する経営経験が5年以上ある者
- または、経営業務を補佐した経験が6年以上ある者
- 法人の場合は常勤の役員、個人事業主の場合は事業主本人または支配人
相馬・新地地域でよくあるケース
長年、個人事業主として建設業を営んできた方が法人を設立し、自らが代表取締役に就任して常勤役員等の要件を満たすケースが一般的です。この場合、個人事業主時代の経営経験も通算することができます。
ただし、経営経験を証明するためには、確定申告書の控えや工事契約書などの書類が必要となります。震災による書類の紛失がある場合は、可能な限り代替資料を準備する必要があります。
要件2:専任技術者
営業所ごとに、許可を受けようとする業種に関する一定の資格や実務経験を有する技術者を専任で配置する必要があります。
専任技術者の資格要件(主なもの)
- 国家資格者(施工管理技士、技能士など)
- 指定学科卒業+実務経験(高卒5年以上、大卒3年以上)
- 実務経験10年以上(資格・学歴不問)
相馬・新地地域の実情
地域の建設業者様の中には、長年の実務経験はあるものの、資格を保有していない方も少なくありません。この場合、10年以上の実務経験を証明することで専任技術者の要件を満たすことができます。
実務経験の証明には、工事契約書、注文書、請求書などが必要です。年度ごとに一定数の工事実績を示す必要がありますので、日頃から書類を整理しておくことが重要です。
要件3:誠実性
請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
この要件は、建設業法違反や不正行為の履歴がないことを確認するものです。通常の事業活動を行っている限り、問題となることは少ないでしょう。
要件4:財産的基礎
請負契約を履行するに足る財産的基礎または金銭的信用を有すること。
一般建設業の財産要件(いずれか)
- 自己資本が500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 許可申請直前の過去5年間、建設業を営業した実績があること
相馬・新地地域での対応ポイント
財産要件は、決算書の貸借対照表の純資産額が500万円以上であることを証明するのが一般的です。ただし、決算書で要件を満たさない場合でも、金融機関発行の残高証明書(500万円以上)で代替することができます。
法人化したばかりで決算を迎えていない場合や、純資産が要件に満たない場合は、残高証明書の取得を検討しましょう。
要件5:欠格要件に該当しないこと
申請者、役員、支配人などが次の欠格要件に該当しないことが必要です。
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
- 不正な行為により建設業許可を取り消されて5年を経過しない者
- 建設業法違反等により罰金以上の刑に処せられて5年を経過しない者
- 暴力団構成員等
通常の事業活動を行っている限り、欠格要件に該当することは稀です。
許可取得後の注意点
1. 毎年の決算変更届
建設業許可を取得した事業者は、毎事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了報告)を提出する義務があります。これは、たとえ工事実績がない年度であっても必ず提出しなければなりません。
提出を怠ると、許可の更新や業種追加ができなくなるだけでなく、監督処分の対象となる可能性もあります。
2. 許可の更新(5年ごと)
建設業許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期間満了日の30日前までに更新申請を行う必要があります。
更新を忘れて許可が失効すると、再度新規で許可を取得する必要があり、その間は500万円以上の工事を請け負うことができなくなります。
3. 変更事項の届出
役員の変更、専任技術者の変更、商号や所在地の変更など、許可申請時の内容に変更が生じた場合は、変更届を提出する必要があります。
特に、専任技術者が退職した場合は、2週間以内に新たな専任技術者を配置し、変更届を提出しなければなりません。専任技術者が欠けた状態が続くと、許可の取消事由となります。
4. 社会保険の適用
令和2年10月の建設業法改正により、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入が許可要件として明確化されました。適用除外に該当する場合を除き、必ず社会保険に加入し、届出を行う必要があります。
相馬市・新地町で建設業を営む皆様へ
相馬市・新地町は、震災からの復興を経て、新たな発展段階に入っています。スマートコミュニティ、防災関連施設、観光施設、港湾関連施設など、多様な建設需要が見込まれる地域です。
建設業許可の取得は、単に法令を遵守するだけでなく、事業拡大と社会的信用の向上につながる重要なステップです。許可を取得することで、これまで受注できなかった規模の工事にも参入でき、事業の幅を大きく広げることができます。
一方で、建設業許可の申請は専門的な知識と多くの書類準備を要するため、初めて申請される方にとっては負担が大きいのも事実です。特に、経営経験や実務経験の証明、財産要件の確認など、個々の状況に応じた対応が必要となります。
当事務所では、地域の実情を踏まえた丁寧なヒアリングと、迅速な手続き代行により、皆様の事業発展をお手伝いいたします。
建設業許可に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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